大判例

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高松高等裁判所 昭和57年(う)31号 判決

物品税法施行令6条別第1掲記「第2種の物品」,番号「13」,類別「家具類」,品目「1たんす類及びたな物類」「3机,テーブル,いす,腰掛け,びょうぶ,つい立て及び火ばち」のうち,「うるし塗りのもの」が非課税とされているのは,それが労力をいとわず積み重ねられた伝統的技術によって作られたものであることに着目されたからであり,そこにいう「うるし塗りのもの」とは,一般家具市場においてうるし塗り家具として取引されるようなものをいうのであって,たとえうるしが塗られていても,それがごく少量であったり,部分的塗装であるために,うるし塗り家具として評価されない程度のものは,非課税物品たる「うるし塗りのもの」に該当しないというべきである。

そこで原判示の物品にうるしが塗られているか否かの点について検討するに,これに関する被告人の供述をみると,それらは最終塗装がうるし塗り(ふきうるし)であるから非課税である(第1回質問てん末書)とか,工程表(原審昭和53年押第23号・当審昭和57年押第15号符号5)に「うわ塗り4回」とある工程がうるし塗りである(第4回質問てん末書)とか,金具を取り付けずみの製品にうるしはけで木部の所々にうるしを塗りつけ,次にからはけで木部の全面にうるしをのばして塗る,半数位の製品については,作業能率を上げるために,金具・木部全面にうるしを塗り,後で金具についたうるしを布でふき取る方法もやる(第5回質問てん末書)とか,飾り棚7号とビューロー7号はうるし塗り4回の物品であるが,それ以外はうるし塗り4回のものばかりというわけではなく,その回数を減らしたもの,及び洋塗料のみのものもある(第8回質問てん末書)とか,課税対象の家具類の全部にうるしを塗っていたのではなく,また1,2回程度うるしを塗ったものもあり,それらはうるし塗り家具としての市場価値が無いかも分からない(第9回質問てん末書)とか,うるし塗装は金具付け後にしたものと,金具付け前にしたものと二とおりあり,納期の点で間に合わない時は金具付け後にうるし塗装をしている,普通のうるし製品のように塗装に重点を置いていないから,市場でうるし塗り家具として通用しないかも分からない(第10回質問てん末書)とか,飾り棚・車だんす・ビューローにはうるしを塗っている,まずステインで着色し,カシューなどの混合塗料を3回塗り,その上にうるしを2,3回ふきうるしの方法で塗る(検察官に対する各供述調書)とか,先に「うわ塗り4回」の工程がうるし塗りであると説明した点について,1回目のうわ塗りはふきうるしの方法で家具の全面(ただし,一閑張りの部分やたんすの底部等を除く)に生うるしを塗り,2回目のうわ塗りは全面に塗るのではなくて,アガリ(色調のこと)の悪い所にのみ塗り,3回目は見残しを補正するだけであり,4回目も見残しの補正であるが,たいがいは省略している,うるしを塗るのは金具取り付け前である(原審公判廷,なお当審公判廷でも同旨)などさまざまに供述していて,うるし塗装が原判示の物品類の全部に及んでいたか否か,塗装の方法や回数などについて,その真相を決めかねる状況であるけれども,他方では原判示の物品全部について全くうるしが塗られていないと断言できる程の証拠がないとともに,被告人の供述の変遷からみて,原判示の物品類の全部について確実にうるしが塗られたともみられず,うるし塗りの物品と洋塗料のみの物品とが混在しているものとみられるが,うるし塗りの物品についての塗装の方法は,被告人宇野雄三がうるし塗り4回の工程と称している方法,すなわち具体的には原審公判廷における供述のような方法でうるし塗装がなされたものとみるのが相当である。そうするとうるし塗装がなされたとみられる原判示の物品は,ふきうるしの技法で1回目は家具の全面(ただし一閑張りの部分やたんすの底部等を除く)に生うるしが塗られ,2回目は色調の悪い所に追加塗装され,3回目は見残しの補正がなされたことになるが,この程度のうるし塗装では,漆器製造業者や漆芸研究者においてさえも,うるし塗装の存否の判定が困難であり,また被告会社から原判示の物品類を購入した多数の家具販売業者においても,品質表示やカタログなどでうるし塗り家具としての取り扱いをしていなかったことも併せて考慮すると,原判示の物品は,一般家具市場においてうるし塗り家具として取引されるようなものに該当しないというべきである。なお原審証人佐々木武士は,原判示の物品は一般家具市場においてうるし塗り家具として取引されるようなものに該当する旨の供述をしているが,別の箇所では「石油でいくら薄めたうるしでも,手がかぶれるとうるし塗りと言います」とも供述しており,その供述全体の調子として,一般家具に対する物品税を廃止すべきであるとする立場からの主張が強くうかがわれ,一般家具市場の現状を正確に表現していないとみられるから,前記供述は信用できない。

以上のとおり,原判決挙示の証拠によって原判示の物品が非課税である「うるし塗りのもの」に該当しないと認定できるし,原判決の法令の適用にも誤りがないというべきところ,当審鑑定人三原一幸作成の鑑定書(当審証人としての供述を含む)によれば,押収にかかる飾り棚7号(前同押収番号符号3)及び同車たんす(前同押収番号符号4)の各表面に塗装されている塗膜は,いずれも「中塗りはカシュー系の塗膜,上塗りは漆系の塗膜。但し,上塗りの漆系塗膜の厚さは何れも極めて薄く,1-2ミクロン程度と推定される。」としており,この鑑定結果は前記認定判断を左右せず,むしろ補強するものとみられる。

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